貧 血
- 血球を造る骨髄で赤血球の生産が低下している場合(鉄、VB12、葉酸不足、再生不良性貧血、骨髄異形成症候群、白血病など)
- 赤血球が異常に壊されている場合(溶血性貧血)
- 体内のどこかで継続的に出血している場合(月経過多、子宮筋腫、子宮内膜症、消化器がん、潰瘍での消化管出血など)
が考えられますが、鉄不足からくる、鉄欠乏性貧血が最も多く見られます。
人間ドックや医療機関で検査データを貰った時に、赤血球数やヘマトクリット、ヘモグロビン濃度の次にMCV(平均赤血球容積)、MCHC(平均赤血球色素濃度)、MCHという項目があると思いますが、 これらは計算から求められる数字で、貧血の診断を進める上で重要なものです。
特にMCVが重要で、80以下では小球性貧血、81~100では正球性貧血、101以上では大球性貧血と分類されます。
小球性では、鉄欠乏性貧血、二次性貧血(悪性腫瘍、腎臓病、慢性感染症、膠原病など)が疑われます。大球性ではVB12欠乏性貧血(悪性貧血や胃切除後貧血など)か葉酸欠乏性貧血が疑われます。
正球性では、前記したもの以外の多くの貧血がこの形をとります。したがって更なる検索が必要ですが、網状赤血球を調べ、増加していれば、急性出血ないしは溶血性貧血を疑います。
網状赤血球が正常であれば胸骨部で骨髄穿刺をすることになりますが、いずれにしてもこういう場合には、専門施設にご紹介することになります
鉄欠乏性貧血とは
鉄欠乏性貧血は何らかの原因で体の中の鉄分が欠乏し、ヘモグロビンの合成が十分に行われないために起こります。
人間は鉄を作り出すことは出来ないため、食物から鉄分を吸収することが必要です。
成人男性で毎日約1mgの鉄が失われます。通常摂取された鉄は約10%が吸収されますので、1日約10mgの鉄を摂取しなければいけません。
成人女性の場合には月経による出血で1日平均2mg失われるため、1日20mgの鉄を摂取しないと鉄の不足状態になります。 鉄欠乏性貧血は日常最も起こりやすい貧血で 、貧血の90%以上が鉄欠乏性貧血です。
男性の0.5%、女性の12.7%が鉄欠乏性貧血であるといわれています。 因みに、赤血球のなかに含まれるヘモグロビンは、体中に酸素を運ぶ重要なはたらきをしています。
鉄欠乏性貧血の原因
鉄欠乏性貧血にはいくつかの原因があります。
食事からの鉄摂取不足の場合。胃や十二指腸切除したための消化管からの鉄吸収障害で供給量が不足した場合。
妊娠により鉄の需要が増えた場合。慢性の消化管出血や月経過多により鉄の喪失量が増えた場合、などがあります。
鉄欠乏性貧血の症状
貧血による組織への酸素供給量の低下を補うために、心拍数が増加します。 心拍数の増加にともない動悸・息切れ・疲れやすい・だるい・浮腫・立ちくらみ・頭重感、顔面蒼白などの症状が出てきます。 その他に爪がスプーン状になる、口内炎、舌炎などの症状が出ることもあります。
なお、立ちくらみ(いわゆる脳貧血)はひどい貧血の場合にも起こりますが、大部分は自律神経機能の低下により下半身の血管が収縮せず、上半身が血液不足になって脳に血がまわらず起こります。 貧血は徐々に進むことが多いため、ヘモグロビンが7g/dlくらいまで減少していても、体が順応してしまい、貧血症状がみられないこともあるため、注意が必要です。
鉄欠乏性貧血の検査と診断
高齢者であれば、悪性腫瘍などを疑い、検査を進めることになります。 便潜血検査や内視鏡を行なうこともあります。
鉄欠乏性貧血の治療法
薬物療法が中心になります。鉄剤の飲み薬(フェローミア、フェログラデュメット)を内服します。
鉄剤を服用すると便の色が黒くなりますが、心配はいりません。副作用として吐き気などの胃腸障害がありますが、多くは続けていくうちに症状が軽減されます。
もし服用が無理であれば、インクレミンシロプに変更すると、比較的スムースに服用できます。お茶に含まれているタンニンは鉄と結合して鉄の吸収を妨げますが、日常生活のなかで普通に飲んでいる程度では問題ありません。 なお鉄欠乏性貧血の原因がはっきりしている場合は、その原因となっている病気の治療をします。
鉄欠乏性貧血の予後
貯蔵鉄が完全に正常になるまでには3~4か月前後はかかるので、フェリチン値を目安として、治療を続ける必要があります。 状況によっては1年間くらい飲み続けることもあります。
鉄欠乏性貧血の注意点
食事療法も大切ですが、食事療法だけでは足りなくなった鉄を補充するのは不十分です。 鉄剤は通常100~200mgを服用しますが、鉄分が最も多いレバーでも1食分(50g)の鉄の含有量は6mgにすぎませんので、鉄剤の内服が必要になります。
貯蔵鉄の状態をみるには、血清フェリチン値の測定を行います。フェリチンの値が20ng/dl以上あれば貯蔵鉄が十分補充されたと判断して、鉄剤投与の中止を検討します。 貯蔵鉄を十分回復させても、鉄の喪失の原因が続いている場合は再発しますので、半年後には一度フェリチンを含めた血液検査して、確認します。
鉄剤の服用にあたり、空腹時の投与が吸収の点では優れています(食後や食事中の投与では空腹時投与の60%の吸収率となります)が、鉄剤には、胃腸障害(吐き気・嘔吐・下痢)などの副作用があるため、食直後または食事中の服用をすすめています。
その他の貧血
- VB12欠乏性貧血
MCVが120以上、血中のVB12が低値であれば、VB12欠乏性貧血です。 萎縮性胃炎が原因でVB12吸収に必要な、内因子が欠乏して起こる悪性貧血と胃切除後などに内因子が減少して起こる胃切除後貧血があります。
昔は治療法がなかったため、恐ろしげな悪性貧血と名付けられましたが、VB12が発見され、その不足がこの病気の原因と分かり、治療可能となりました。 治療は、最初はVB12を1~3回/週で筋肉注射をし、貧血が正常になれば2~3か月に1回の割合で注射しますが、止めると再発しますので一生涯続ける必要があります。
- 二次性貧血
二次性貧血では小球性貧血あるいは正球性貧血の形をとります。悪性腫瘍、腎臓病、慢性感染症、膠原病などがあって二次的に貧血が出てきます。 原疾患の検索と治療が優先されます。慢性腎臓病(CKD)があり、血中のエリスロポエチン値が低い場合には、エリスロポエチン(エスポー、エポジン)注射で貧血が改善され、健康保険も適用されます。
- 溶血性貧血
正球性貧血で網状赤血球が増加し、間接ビリルビン優位の黄疸があれば、溶血性貧血と診断されます。この場合には血液専門医を受診することになります。
貧血は頻度の高い病気です。貧血かなと感じた時は気軽にご相談ください。
榎本医院
概要- 院長
- 榎本 真也 医学博士
- 前院長
- 榎本 哲 医学博士
- 標榜科目
- 内科、脳神経外科、呼吸器内科、小児科
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- 日本内科学会認定医、日本脳神経外科学会専門医
日本救急学会認定専門医、日本脳卒中学会認定専門医
日本脳神経血管内治療学会認定専門医 - 住所
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