バセドウ病とは
甲状腺部に一致して、前頚部が腫脹、腫大し、甲状腺機能亢進による中毒諸症状(暑がり、発汗、動悸、手のふるえ、易疲労感、体重減少など)がみられる病気です。バセドウ病は女性では100~150人に1人の頻度でみられる病気で、決してまれなものではありません。
一方男性ではそれより少なく、女性の1/5~1/4ぐらいの頻度で見られます。他人に首がはれている、首が太いなどと指摘される場合や、たまたまの診察時に気づかれることもあります。
バセドウ病の原因
バセドウ病は、甲状腺刺激ホルモン(TSH)受容体に対する自己抗体である、抗TSHレセプター抗体(TRAb;測定方法によって、TBIIとTSAbがあります)が免疫系で過剰につくられます。このTRAbが甲状腺を刺激し、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されるため、機能亢進症が起こる免疫の病気です。
通常TRAbと言った場合はTBIIのことです。このTRAbができる原因はまだ詳細にはわかっていませんが、甲状腺の病気は家族に同じ病気の人が多いことでもわかるように、遺伝的素因が関係していると考えられます。
バセドウ病の症状
甲状腺ホルモンが過剰になると全身の代謝が亢進するので、食欲が出てよく食べるのに体重が減り、暑がりになり、全身に汗をかくようになります。精神的には興奮して活発になるわりにまとまりがなく、疲れやすくなり、動悸を1日中感じるようになります。手が震えて字が書きにくくなり、ひどくなると手足や全身が震えるようになります。イライラして怒りっぽくなり、排便の回数が増えます。
大きさに差はありますが、ほとんどの症例で軟らかいびまん性の甲状腺腫が認められます。また眼球突出がみられる場合があります。
バセドウ病の検査と診断
甲状腺ホルモン(遊離サイロキシン:F-T4、遊離トリヨードサイロニン:F-T3)と甲状腺刺激ホルモン(TSH)を測定することで、ある程度診断できます。
さらにバセドウ病であることを確認するには、原因物質である抗TSHレセプター抗体(TRAb)を測定し、陽性であれば確定します。
まれにこの抗体が陰性のことがあり、甲状腺刺激抗体(TSAb)を測定する場合や、放射性ヨード摂取率を測定することがあります。TSAbが陽性であればバセドウ病ですが、陰性のとき、放射性ヨード接種率が甲状腺にびまん性に増えていれば、バセドウ病と診断されます。眼球突出などバセドウ病眼症の診断のためには、眼窩CT検査をすることもあります。
バセドウ病の治療
抗甲状腺薬治療、手術、アイソトープ治療の3種類がありますが、通常、抗甲状腺薬治療をまず行います。
抗甲状腺薬(MMI;メルカゾール、PTU;プロパジール)は甲状腺ホルモンの合成を抑える薬です。通常はメルカゾールを使いますが、この薬をF-T3,F-T4の値を見ながら、一般的には1日30mgから開始しだいに減量していくことになります。
4週間くらいで甲状腺ホルモンが下がり始め、2か月もすると正常になって、自覚症状はなくなり、完全に治ったようになります。しかし、原因のTRAbが消えるのはもっと後(2~3年後)になりますので、TRAbが陽性の間は抗甲状腺薬をのみ続ける必要があります。
一般的にはメルカゾールを2日に1錠服用まで減量でき、TRAbが陰性、かつ甲状腺機能検査が半年以上正常であれば、寛解したと考えて、メルカゾールを中止してみます。
いつまでもTRAbが陰性にならない場合や、抗甲状腺薬を中止すると再発する場合には、専門施設にご紹介することになりますが、甲状腺を一部残して切除する甲状腺亜全摘(あぜんてき)手術をするか、放射性ヨードを投与して甲状腺を壊すアイソトープ治療をすることになります。
このどちらを選ぶかは、甲状腺の大きさや年齢、妊娠の希望などを考慮して決定されます。しかしこうした治療によって、将来甲状腺の機能低下症を起こす可能性はあります。なお、妊娠中では抗甲状腺薬はプロパジールを選択することが多く、授乳中にはメルカゾールは投与できないことになっています。
自覚症状がなくなっても治ったわけではなく、いつ薬をやめるか、薬物治療以外の治療に切り替えるかなど、患者さんとよく相談しながら治療をすすめます。
バセドウ病の注意点
日常生活では、甲状腺ホルモンが正常になるまでは、睡眠を十分にとり、規則的でゆったりとした生活が望まれます。またこの病気は、精神的ストレスにより悪化することが知られています。日常生活でそれを避けることは難しい場合もありますので、同じ事柄でもストレスと感じないもののとらえ方、身の処し方が必要です。
喫煙は、バセドウ病の経過に有害であると考えられていますので控えましょう。
榎本医院
概要- 院長
- 榎本 真也 医学博士
- 前院長
- 榎本 哲 医学博士
- 標榜科目
- 内科、脳神経外科、呼吸器内科、小児科
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- 2名
- 資格
- 日本内科学会認定医、日本脳神経外科学会専門医
日本救急学会認定専門医、日本脳卒中学会認定専門医
日本脳神経血管内治療学会認定専門医 - 住所
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